Teruchanち

写真が好き。食べるのが好き。お酒が好き。青が好き。

銀婚式物語@新井素子

久々に本の感想など。
2010年からWebで連載されていたものが10月に本になって出版。少し前に読了してたのを、やっとこアップ。
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結婚を題材に私小説っぽく書かれた「結婚物語」「新婚物語」の続編。家族構成や結婚式の日程などが事実に即しているだけで内容はフィクションと素子さんは言い張るけど、キャラが実物と似すぎているのでみんなが「すべて事実」と思って読んでしまうシリーズ(笑)
Web連載が始まった時は狂喜乱舞して、感想も書いてたんだけど。しばらくブログ更新をサボってたというだけでなく、実は読むのを途中で(というか早々に)挫折してしまったんだよね(汗)
(感想はこちら 第1回第2回第3回
↑にも書いたように、冒頭はとにかく猫の話ばかり。初代お猫さまのファージにはエッセーなどでなじみがあったものの、どちらかというと積極的に猫が苦手なので、読んでて楽しくなくて、ついつい挫折‥‥。当初の予定ではWeb連載を読破後に本が出たら買って再読という予定だったものを、冒頭部分以外は本で初めて読むことに。
で、読んだ結果は。良かったぁ。面白かったぁ!という訳で感想をば。


結婚物語」は素子さんがモデルの陽子さんと旦那さんがモデルのたーさん(正彦くん)が結婚を決めてから結婚式を挙げるまで、「新婚物語」は二人の新婚旅行から1回目の結婚記念日までを描いたお話。今回の「銀婚式物語」はタイトルの通り二人の銀婚式の日の1日だけのお話なんだけど、主人公の陽子さんがとにかく一日中回想しまくりで25年間を振り返るので、登場人物達の「それから」がわかってしまうという仕組み。
「結婚」「新婚」では二人のやりとりなんかが創作だったんだろうけど、今回は陽子さんが出来事を振り返ってる形式がほとんどだから、創作の入りこむ余地が少なそうで、リアルさというか「これって事実なんだろうなぁ」感が倍増。エッセーとかで知っていた「囲碁にハマった」「家を建てた」なんかをもう一回読んでいる感じで、「これは陽子さんのお話」と頭の半分で思いながらもう半分では「素子さんはこうだったんだ」と思っちゃう(笑)

初代お猫さまのファージと、今の猫ズ(天元とこすみ)のあれこれ。雀やネズミを捕ってきてお供えするとか、家中を駆け回ってズタボロにするとか‥‥とにかく「そりゃ大変だ」で。やっぱり猫は飼えないなぁと再確認。

囲碁にハマる

ホームパーティの仲間と一緒に始めた囲碁に、夫婦揃ってズブズブとハマった話。知り合いも増えて、老後もボケずに夫婦で楽しめる‥‥と言うコト無しな趣味に40代になってから出会うって素晴らしいよなぁと、つい洗脳されそうに。

家を建てる

とにかく本が多すぎるので、「1階が本棚」な家を建ててしまう話。エッセーで読んだ時は、我が家も本が多いので「いいなぁ」なんて思ってたけど、やっぱり桁が違う。蔵書が数万って、そりゃマンション並みの重量鉄骨の家が必要だよなぁ。
本の総量も違うし、だいたいそんな家を建てることは出来ないけど、本を分類してExcelで管理して‥‥というのは大変だけど楽しそう。いや実際、うちでもオットはExcelにつけてるんだよね。所在地管理はしてないけど。わたしもやったことあるけど「気が向くと凝り性なB型」なもんで出版社名やらコードやらと凝り過ぎて、すぐに挫折した。
「新婚」では確か、陽子さんが家の間取り図の載ったチラシを集めるのが趣味という話があった気がするけど、わたしもそういうの大好き。建もの探訪とかビフォーアフターとかドリームハウスとか、録画しちゃうくらい好きだし。だから、陽子さんのおうちは羨ましいし、楽しかった。

病院通い

ある日突然、胸が爆発した陽子さんが、膿と闘う日々の話。エッセー「もとちゃんの痛い話」で書かれていた粉瘤(アテローム)のことだよね。「痛い話」はとっても面白い闘病記で、世間には意外と多いらしい粉瘤というモノを初めて知ったんだけど、「銀婚式」では病名にも触れていないし、エッセーを読んでない人にはイマイチ消化不良かなって気もする。
粉瘤の治療で産婦人科に通ったついでで、不妊についても書かれてる。「新婚」で買ったマンションには子供部屋もあったことだし、もし陽子さん(=素子さん)夫婦に子供ができていたとしたら「子育て物語」とかも書かれてたのかも知れないなぁ。

居なくなった人達

「結婚」の登場人物達のその後として、おばあちゃんのかくさんとお父さんの力さんが亡くなった話。
素子さんのお父さまがパーキンソン病だというのはエッセーで読んでいたけど、病院探しに奔走したことや、お母さままでも同じ病気に罹ったことなど、たぶんエッセーだと苦労話っぽくなりすぎることを、フィクションとすることでサラッと書いてる感じ。

料理と掃除

ホームパーティをしょっちゅう開いてしまうくらい料理が大好きだけど、掃除は苦手な陽子さん。「料理が好きな人は掃除が苦手」という俗説は良く聞くし、わたしも掃除や片付けが大の苦手だから共感しまくり。(その割には料理も手抜きだけど‥‥)
掃除好きな作家と「人は御飯を食べないと死ぬ」「埃があっても人は死ぬ」と口論をしたとう話が出てくるけど、これは氷室冴子さんだよね。いや、こっちが素子さんではなく陽子さんだから向こうは火村彩子センセイ*1か?
素子さんと氷室さんの対談が読みたくなって、氷室さんの「ガールフレンズ」*2とか引っぱり出しちゃったよ。


表紙は「結婚」「新婚」と同じ、さべあのまさん。25年経って少しオトナになった(?)陽子さんとたーさんが描かれてます。表紙、裏表紙、帯だけでなく、表紙を取った本体に隠されてるイラストも素敵。でも挿絵は全然無いんだよねぇ。Web連載時の挿絵も収録して欲しいよぅ。
で。この本は単行本なんだけどソフトカバーなんだよね。470頁のボリュームだから、ハードカバーだと2000円オーバーになっちゃうから安く抑えるための配慮なんだろうなぁ。それにこの厚さでハードカバーだと、読む時に持ちにくいよね、きっと。

ちなみに。もともとの「結婚物語」は角川文庫だったけど、中公文庫から上下巻で復刊されてます。
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[rakuten:neowing-r:10582218:detail]
ついでに「新婚物語」も復刊してくれると嬉しいんだけどなぁ。もちろん角川版を持ってるけど、もっとあとがき読みたいし(笑)

*1:少女小説家は死なない! (コバルト文庫)の主人公

*2:さすがに楽天でもAmazonでも見当たらなかった。コバルト文庫で出た対談やイラストや下書きなど山盛りの冴子スペシャル。素子さんとの対談が載っているので保存版。